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「Te-129mとAg-110m、そしてI-129の危険性の推察」
 
平成23年8月26日作成
福島県内の土壌モニタリングの測定結果
(平成23年6月1日〜平成23年8月24日までの測定結果)※1
からの健康被害の有無の検証を行いました。

結論として、半減期の長さ及び濃度的な要因から
Te-129m、Ag-110m、I-129いずれの各種も健康被害は無視できるレベルと推察しました。

その詳細を以下に示します。


注目すべきは、Te-129mでしょう。
理由は、検出されたTe-129mはI-129に壊変するため、
I-131と同様に甲状腺への蓄積があることは明らかだからです。

さらに、モニタリング結果より、
6月を過ぎてもTe-129mが浪江町昼曽根にて78,000Bq/kg検出されたことに、
ほとんどのTe-129mがI-129になっているとするならば、
3月15日においては、いったいどれだけ量のI-129が表土にあったのかと危惧しました。

よって、量、質、共に極めて危険であるため、この危険性の有無の検証を試みました。
ここからは、難解ですが頑張って付いて来てください。

まず、福島県内の土壌モニタリングの測定結果を以下に代表的な数値をピックアップしてまとめました。
この中で最も高い数値を示した浪江町昼曽根のデータで検証します。

浪江町昼曽根  Cs-137 420,000Bq/kg
        Te-129m 78,000Bq/kg


何故、Cs-137の放射能量が必要かと言うと、Te-129mは半減期が短く、今となっては定量できません。
ほとんどのTe-129mがI-129に壊変しています。

また、現在土中にあるI-129はSr-90と同じくβ崩壊のため定量するために時間が掛かります。
そこで、Cs-137は、半減期も長く、検出量がはっきりしていますから、
このCs-137から3月15日以降の降下したI-131をCs-137の量から算出します。

これをして良い理由がI-131、Te-129mは核分裂生成物(原子炉内だけで生成する最初からあった核種、
Cs-134は放射化生成物で核実験では検出されない核種)であるためです。
つくば市のKEKのデータ※2より、3月15日のCs-137に対するI-131の量比は、8.75となります。
つまり、最初にI-131は、Cs-137の8.75倍あったと言う事になります。

と言う事は、浪江町昼曽根には、368万Bq/kg(3.68×106Bq/kg)のI-131があったことになります。
次に、I-131とI-129の半減期を比べます。

I-131は8.04日、I-129は1570万年=57億3千日
よって、7.13×108倍となります。

これは、7.13×108倍の期間中にI-131のエネルギーと同じ量のエネルギーをI-129が出すことになるので、
この数字で割れば、I-129の量をI-131の量と仮定して算出したことになるのです。

結果、3.68×106 Bq/kg÷7.13×108=0.00516 Bq/kg
ここに、I-131とI-129の経口摂取の実効線量系数を加味すると
(I-131;2.2×10−8 I-129;1.1×10−7よりI-129の方が5倍危険※3)
0.00516 Bq/kg×5=0.026Bq/kg となります。

比べる必要が無いくらい低い値となりました。
一番高い値が検出された浪江町昼曽根での検証です。

よって、福島県内は福島第一原発周辺以外で、Te-129m及び I-129を心配する必要な無いと結論付けました。
また、Ag-110mに関しても、グラフより放射性セシウムの水稲作付基準が5,000Bq/kgと比較しても、
これも危惧する濃度ではない事が分かります。

放射性セシウムや放射性銀(Ag-110m)は特定の臓器に蓄積することが無いことから、
内部被曝による発癌の危険性は非常に小さいと言われていることが一番の理由でしょう。

文責 AFTC副代表 半谷 輝己

※1 土壌モニタリングの測定結果(平成23年6月1日〜平成23年8月24日までの測定結果)

※2  KEK高エネルギー加速器研究機構;
つくば市で観測された空気中の放射性物質の種類と濃度の測定結果について(6)
http://www.kek.jp/quake/radmonitor/GeMonitor6.html

※3 緊急被ばく医療研修のホームページ;緊急時に考慮すべき放射性核種に対する実効線量係数
http://www.remnet.jp/lecture/b05_01/4_1.html

※4 文部科学省;放射線モニタリング
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/

   参考資料;厚生労働科学研究班
http://trustrad.sixcore.jp/npp_radiation.html#I-129



追記

8月14日付けで、文科省のホームページに、放射線モニタリング※4のページが出来ました。
そこには福島県内の土壌モニタリングの測定結果
(平成23年6月1日〜平成23年8月24日までの測定結果)※2や
環境試料の測定結果
(平成23年6月1日〜平成23年8月24日までの測定結果)雑草中の放射能量が載っています。
今頃何だろうと思い開いて見ると、そこには想定外の核種が幾つか。
 

I-129、Te-129m、Ag-110m、これらは、全くの想定外だったのです。
正直、私もI-131の半減期が大きく過ぎた現在、
さらに、7月12日に国立保健医療科学院の山口上席主任研究官の試算で
「福島県民はK-40など自然な状態で食品に含まれている放射性物質による
年間被曝量(約0.4mSv/y)の約4分の1にあたる」
との発表を受けてほっとしていました。

同時に、AFTCでも、天然きのこを除き、野菜、肉、卵、水産物、桃、
そして、水稲の予測まで、安全確認を発信して来ました。
あとは、風評を払拭するための方策を検討し始めていた矢先に土壌モニタリングの内容を知ったのです。

慌てて再調査をしていると、数人の友人よりテルルの問い合わせのメールも届き、さらに緊迫ムードへ。
調べ始めてすぐに「これはやばいぞ!どうして見逃していたのだ!AFTCのHPに警告の発表を急がなくては!」

そして、数日後に取り越し苦労と一件落着に。
正直、油断だったと思います。そして、まだまだ勉強不足でした。
風評を払拭しようとしていた私たちが、風評を発信しかけたのです。
これは大いに反省すべき経験をさせて頂いたと思っています。
 

良かれと思って発信した情報が、もし間違いならとんでもないことになるのです。
特に第一次産業は大変です。風評被害を回復するには丸一年かかります。
済みませんでしたでは済まないでしょう。

「正しい情報に恐れて、正しい情報を発信する」
標語を少しアレンジして見ました。
 

「メディアリテラシーを勉強しましょう」
たやすい勉強ではないようです。
Te-129m、Cs-137 土壌モニタリング(採取月:6月)
Ag-110m 土壌モニタリング(採取月:6月)
 ※単位はBq/kgである
 ※文部科学省発表のデータを基に作成 
 ※測定試料は、6月1日から6月25日までに採取された645件である
 ※同一地域の測定試料が複数あった場合は、最も高い値の測定試料を採用 
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