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「LNT仮説としきい値と 放射線ホルミシス効果への一考察」
 
平成23年10月 6日初稿
    平成23年10月24日改訂
平成24年 2月28日改訂
1.しきい値無し直線仮説(Linear Non-Threshold : LNT仮説)とは?
放射線の被ばく線量と影響の間には、
しきい値がなく直線的な関係が成り立つという考え方を
「しきい値無し直線仮説」と呼ばれています。※1
つまり、少しでも放射線に被曝すれば癌のリスクが発生するという仮説です。

2.放射線ホルミシス効果とは?
高線量では有害な放射線が低線量では生物活性を刺激する、
あるいは“適応応答”と呼ぶ後続の高線量照射に対する
抵抗性を誘導するなどの現象を言います。※2
つまり、低線量の被曝は老化防止等の効果があるという仮説です。

以下にその図を示します。

図‐1
図-1 LNT仮説と放射線ホルミシス効果

LNT仮説に対して色々と文献を調べていると、
判断が難しいように思います。

また、ホルミシス効果の文献もネズミの実験が主で、
その論文数の少なさを感じます。※3
一般的には、しきい値なきLNT仮説には無理があり、しきい値はあると解釈され、
放射線ホルミシス効果を肯定するまでには至っていない
と言うのが現状と言えるのでしょう。

ここで素人から見ても疑問があるのです。
まず、放射線としての影響である前提から、
α線β線γ線中性子線を一括りにして論じているようです。
ここに大きな無理があると思えてなりません。

同じ放射線とは言え、
素粒子であるα線や中性子線と電子であるβ線、電磁波のγ線が、
すべて同じ毒性であるとは到底思えないのです。
だから実効線量があるのだと言われればそれまでですが、
低線量率下での実効線量の有効性に疑問は出ないのでしょうか。

私は、Pu-239,Ra-226,Rn-222等のα線を出す核種においては、
LNT仮説は成り立ち、Cs-137のような、特定の臓器に蓄積する事がなく、
β線γ線のみを出している核種に限れば、
LNT仮説は成立しないのではないかと考えています。

この事は、Cs-137,Cs-134だけの内部被曝とするならば、
固形癌の発生のしきい値と言われている100mSv※4がもっと緩い数値、
例えば500mSvと言うしきい値も有り得るのではないかと思えるのです。

進化の過程で人が獲得したP53を中心とするDNAに対する損傷修復機能が、
γ線に対して極めて有効に働くのではないかと考えられるからです。

やはり、α線を出すPu-239,Ra-226,Rn-222と
α線を出さないCs-137、Cs-134は、
切り離して考えるのが常識的な対応ではないかと考えます。

その根拠は、チェルノブイリ原発事故後25年目の現在まで、
放射性ヨウ素のような特定な臓器に蓄積して
明らかにそれが発癌の原因であると言う論文が、
放射性セシウムに対しては一つも辿り着かないからです。

出て来る論文は、
I-131以外ではPu-239,Ra-226,Rn-222等の
α線を出す核種が原因とする論文ばかりです。

放射性セシウムは、放射性核種でありながら
他核種と比較して特殊と捉えるべきなのです。

平成23年10月6日、文部科学省の放射線審議会の基本部会は、
東京電力福島第一原子力発電所事故で
放射性物質が拡散した状況下の一般住民の被曝線量について、
「年間1〜20mSvの範囲で可能な限り低い値を段階的に設定する」
とする見解案を公表しました。

今、私たちの身の回りにあるのは、放射性セシウムだけです。
年間20mSvの被曝量の暫定基準値は、
それほど無理な数値ではないと言って良いでしょう。

そればかりか、
放射線ホルミシス効果さえも期待して良いのではないでしょうか。

根強い人気のある玉川温泉の岩盤浴において、
放射線による治療効果の有無の根拠が
γ線によるものなのだと証明できる切っ掛けになるかも知れません。

福島県内において、今後、間違いなく癌による死亡数は激減し、
平均寿命が延長するだろうと言われています。

これは、広島、長崎でも見られた現象で、
福島県民の癌検診率の増加がその理由です。

放射線ホルミシス効果が、
平均寿命の延長の根拠と言うには無理があると言えるでしょう。

けれども根拠は乏しいことではありますが、
γ線がU型糖尿病の減少等の
様々な疾病への治癒効果を持ち合わせているかも知れません。

是非、医学関係者の皆さまには、
疫学としての放射線ホルミシス効果を
追求して頂きたいと切に願っております。
文責 AFTC副代表 半谷 輝己
追記

LNT仮説のしきい値について
様々な文献およびICRP委員のご意見を伺い学んでみると、
しきい値は存在しないものと理解するようになりました。

ただし、100mSv以下において放射線の影響は
微細なものであることは間違いないでしょう。

このことにより、低線量被曝のリスクは他のリスクとの比較を考えることが
極めて現実的な対応と言うべきでしょう。

よって、低線量被曝による恐怖感の呪縛から逃れるためには、
論理的かつ体感的なリスクマネジメントを行うことにより
克服できると考えられます。

なお、放射線ホルミシス効果は
低線量被曝における議論においては触れないことが望ましいだろう。

※1 原子力百科事典 ATOMICA

※2 原子力技術研究所 放射線安全研究センター LNT仮説に関する論文の概要
http://www.denken.or.jp/jp/ldrc/study/topics/20080604_2.html

※3 低線量放射線の影響の正しい理解にむけて
http://www.denken.or.jp/research/review/No53/chap-2.pdf

※4 Preston et al. RadiatRes160:381-407, 2003
 
 
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