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「キノコと食文化」
 
平成23年7月1日作成
天然のキノコには、独特の食文化があります。
ヨーロッパにおいては、キノコの鑑定士の資格だけでなく
職業として確立している地域も少なくないのです。

一番の理由は、毒キノコの存在です。
毒キノコの鑑定方法は、絶対に簡易的なものはありません。
それぞれの毒キノコの特徴を詳細に覚える以外ないのです。
そのためキノコ鑑定士という資格制度や職業が必要とされているのです。

日本にはないこの制度や職業が、ヨーロッパにある理由は、
ヨーロッパの毒キノコは人命を簡単に奪ってしまう種類も多く、
しかも最も人気のあるイグチ科のキノコに多く属しており、
そのために、毎年事故が絶えないと言う事実があります。

もう一つの理由は、このイグチ科のキノコは
特に鑑定が難しい属でもあるからと言えるでしょう。

最近では、イグチ科ヤマドリタケはポルチーニと言う
イタリア語の呼び名で聞いたことがあるかも知れません。

「死亡事故があっても食べたい」
それほど、キノコはヨーロッパで人気があるのです。

ウクライナで放射能汚染のキノコの摂取制限があっても、
キノコ好きの人々が隠れて食べてしまう理由でもあります。

どれだけ毒があると知っていても食べてしまうのがキノコなのでしょう。
こんな非常識もキノコ文化の特徴と言えるかも知れません。

キノコの食文化は日本にもあります。
しかも、長い年月を掛けての伝統ある食文化です。
先人たちが、文字通り人体実験を経て
得られた経験を積み上げて出来上がった食文化と言っても過言ではありません。

さらに、日本のキノコ文化は
「キノコの城は、孫にも教えるな」と言う言葉があるくらい、
情報は隠ぺいされ、一部の人間だけに伝承されて来ました。
このため、地域性が強いという特徴もあります。
例えば、栃木県民は「チチタケ」をチタケと呼び、こよなく愛しています。
でも、栃木県民だけです。

同じ様に、「ツチグリ」をマメ団子と呼び梅雨の季節に収穫し、
こよなく愛するのは、福島県民と山形県民だけが受け継ぐ食文化なのです。
他の地域では、見向きもされないキノコたちです。

この様に、非常に狭い地域で受け継ぐ日本のキノコ文化は
ヨーロッパのキノコ文化に比べ、
鑑定士の資格制度もなく貧弱なものと言えるのです。

つまり、福島県や北関東も放射性物質に汚染され、
この危険性から一部地域で受け継がれているキノコの食文化は、
このままでは消えてしまうでしょう。

よって、この貴重な地域性が強い食文化を守るためにも、
キノコの自生地の土中の放射能測定も進めなければならないと言えるのです。
早急な測定調査が急がれるのは、キノコ文化を愛する人々の願いなのです。

私事ではありますが、学生時代よりキノコを趣味とし、
日本菌学会に10年近く所属し、葛尾村に住まいを移してからは、
一人でキシメジ科オオイチョウタケの竹林型と杉林型の違いによる
子実体形成への影響の調査研究や
イボタケ科コウタケとシシタケを異種とする調査研究を続け、
同時期に4年間、キノコの採取会と勉強会を催し、
のべ200人以上の人々に
キノコの知識と文化の伝承の一端を担う仕事も行って来ました。

このような努力が消えてしまうことは、甚だ残念でなりません。
私は、福島におけるキノコ文化の継承の必要性を
強く訴えなければならない一人なのだろうと
勝手ながら私の立ち位置を決めさせて頂きました。

私がやらずして誰がやるのかという精神に則り、
ここに記録として残したいと思い、筆をとりました。 


文責 AFTC副代表 半谷 輝己

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