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「生涯累積100m?と暫定基準値」
平成23年8月27日初稿
平成23年8月30日改訂
福島原発事故以降、最初に示された正式かつ具体的な数値としては、
平成23年4月19日に文部科学省から福島県内の限界放射線量として、
外部被曝としての放射線量の限界を「年間20mSv」とすることを、
福島県知事および福島県教育委員会へ示しました。

    ところが、平成23年5月12日に社団法人日本医師会は、
この年間20mSvを子どもたちへの放射線感受性の高さ、
および科学的根拠が不明確であるとの見解を発表しているのです。

以上の経緯を見ている福島県民としては、
どこまでが安全でどこまでが危険であるのか基準が見えてこない状態が続いています。

そこには、疑心暗鬼と不安だけが溜まる一方と言うのが私たちの正直な気持ちで、
現実には何も解決はしていない苛立ちだけが続いています。
そして、厚生労働大臣の諮問を受けた食品安全委員会、小泉委員長より、
平成23年7月26日に食品健康評価書案に生涯累積100mSvと言う具体的数値が発表されました。
案であるにしても、この数値は年間20mSvより遥かに厳しい基準値として福島県民に受け止められています。

なぜ遥かに厳しいのか、まず、4月中旬の年間20mSvと7月末の生涯累積100mSvの受け止め方に
大きな温度差があったと言う事実が前提となります。

つまり4月中旬時点での20mSvには、
「そんな甘い基準で良いのか?そこまで被曝して健康被害は出ないのか?年間1mSvはどこに行ったのだ!」と言う意見が大勢を占めていました。

けれどもその後、健康被害の情報はどこからも発信されず、判断が付かないままではあるものの、
福島県民は徐々にその数値を受け入れ始めて、
福島第一原発30㎞圏内、飯舘村、伊達市、福島市等の一部を除き
通常の生活を取り戻そうと動き始めていました。

また、7月12日に厚生労働省施設機関である国立保健医療科学院の山口上席主任研究官の試算で
「福島県民はK-40など自然な状態で食品に含まれている放射性物質による
年間被曝(約0.4mSv/y)の約4分の1にあたる」
との発表もあり、ようやく安全から安心を感じ始めていた頃でもあったのです。

と同時に、野菜や果物、特にサクランボの価格の暴落、次いで桃の価格の暴落の状況が知らしめられ、
新たな不安を感じ始めていた時期でもありました。
それは、放射能からの直接被害ではない新たな問題、風評被害です。

厚生労働省発表の放射能測定結果が基準値を遥かに届かない放射性セシウムの検出量の発表があると、
「微量検出」と言う見出しのニュースが全国を駆け巡ります。
安全基準が守られていると言う見出しは見当たりません。

この瞬間から福島県の第一次産業は大打撃を受け続けているのです。
メディアの罪がどれほど重いか、気が付くと彼らは、
被災した福島県民の息の根を止める首謀者になっていたと言っても過言ではないでしょう。

この風評被害は、消費者、生産者のどちらにも被害者と言えるでしょう。
マスコミに煽られた消費者は新鮮な食品を買う事を阻まれ、生産者も検出は基準値以下となっても、
安全と基準値を結びつけない報道に通常の卸値の出荷を阻まれたのです。

以上の事が、生涯累積100mSvが厳しい基準であるという事なのです。
基準値をさらに下げたことは、福島に住む事を許されないことを記事に出来る格好の材料となるのです。

現実にこの数字を超える地域や該当者は、近い将来数多く現れることは必至です
そして、今や最も恐れる風評被害は生涯死ぬまで続くことを意味します。

累積被曝線量が超えたらどうするのか。引っ越すのか。補償はあるのか。毎年検査するのか。
現実的にどのように算出するのか。次から次に疑問が生まれます。
この生涯累積と言う言葉には、不安だけが生まれるだけなのです。

そこには、言葉に原因があるようです。風評被害とは、実際の数字より言葉の影響が大きいのです。
数字で示せば安心できると多く方が発言しています。
確かにその途通りですが、その数値に価値を与えるのが言葉なのです。

暫定基準値、平常時基準、生涯累積、ここから何をイメージするかで数字の意味も変わるのです。
さらには、変えられるとも言えるでしょう。

以下に、私たちAFTCの主張を示します。
まず、生涯累積と言う言葉から見てみましょう。
私たちAFTCの意見は、生涯という言葉を外す事を要望します。
この言葉は、福島県民は生涯我慢をしなさいと聞こえます。

私たちが欲しいのは、暫定基準の期間をいつまでとするのか。
さらに、平常時へ何年かけて移行させるのか。具体的な数字が欲しいのです。

言葉を変えられると言うなら、「目標値」や「我慢値」と言う言葉でも良いでしょう。
基準値と言う言葉が上からの言葉に聞こえなくないからです。

以下の図を見てください。
平成23年4月11日に原子力安全委員会から「放射線防護の線量の基準の考え方」が示されています。



福島第一原発から飛来した数々の放射線物質は明らかに存在します。
これを今直ぐ、元通りにしなさいと言っても悔しいですが現実的ではありません。

では、どうすれば、現実的なより良い解決が出来るのでしょうか。
私たちAFTCでは、暫定基準値から平常時への移行をこの図の通りで良いと考えています。

残る最大の焦点は、それぞれの期間の問題となるでしょう。

また、現在の暫定基準値も見直すことを視野に入れるべきとも言えます。
何故なら、表-1に示す日本とアメリカの暫定基準値の違いを見ても、
単純な理由で決められていないことが容易に想像できます。

表-1 日本とアメリカの放射能暫定基準値の比較

日本 米国

放射性ヨウ素(I-131)

2,000 Bq/kg

170 Bq/kg

放射性セシウム(Cs-134、Cs-137合算)

500 Bq/kg

1,200 Bq/kg


もし、今の日本にもっと適した暫定基準値が有り得るとするならば、
これを見直すことに誰もやぶさかではないでしょう。
さらには、後の平常時基準値がないとすれば、それも決めるべきです。
生産者側の基準から消費者側の基準への移行と言う解釈でも良いかも知れません。

私たちAFTCの提案を話すと、市民からは以下の答えが返って来ます。
自分の立場だけと言うより、消費者や生産者と言う立場を超えて、
お互いの立場を理解しての意見が多いのです。
それだけ、地域全体の危機感が強い証拠と言えるでしょう。

「来年3月までなら暫定基準値で頑張ろう。
あとは、Cs-134の半減期を目安に、3年半ぐらいで平常時基準に移行して欲しい。
もし、平常時基準が難しいなら調査研究によって、
新しい基準値を設けて欲しい。とくかく頑張る目安が欲しい」

「一年我慢しろと言われれば、我慢もできるが、生涯我慢しろとはあんまりだ。
福島県民をどこまで苦しめたいのか。今まで福島で作った電気で恩恵を受けていたのだから、
東京都民も暫定基準値内の作物を食べて一緒に我慢をして欲しい。
来年もまた風評被害があれば、福島の畜産、果樹、水稲、農家は壊滅的な打撃を受けてしまう。
二年目の我慢は無理だろう」
「基準値は殆どクリアーしているのだから、残りは風評だけだ。
どうして、マスコミはマイナスのイメージの言葉を選ぶのか。
マスコミは福島県民を本当に救いたいと思っているのか疑わしい。報道の仕方に悪意を感じる。
言論の自由は儲けるためにあるんじゃない。ジャーナリズム魂とは真実を伝える慈悲の心ではないのか」

「暫定基準は、消費期限に似ている。正直ちょっと過ぎても問題は無い。
国は、暫定基準でも遥かに安全の範囲でのしきい値から基準値を決めていると聞いている。
だったら、この暫定基準値を日本人全員で我慢して欲しい。
暫定とは、ずっとでは無い、一年か二年だから暫定というのだ。それぐらい我慢出来ないのか。
生産者は、だんだんと平常時の基準に近づけようと言っているのだから、そこを理解して欲しい」

第一回たむら地方市民集会に出席して頂いた復興構想会議検討部会専門委員の藻谷氏から
「福島の人は人が良すぎる、すぐに我慢をする東北人の気質は今はいらない。
もっと不満を言わなくていけない。もっと怒らなくてはいけない」
とアドバイスを頂いています。

無論、一番の加害者は東京電力です。これを忘れる事は出来ません。
この問題はいずれ必ず解決しなければならないでしょう。

今コラムに置いては、福島県民の正直な意見を書かせて頂きました。
それほどに、風評被害は深刻な状況になっているからです。
感情的な文章であることに申し訳なく思います。
ですが、ご理解いただけることを切に願います。
日本全国のみなさん、福島の復興に協力してください。
みなさんの力をお貸しください。

文責 AFTC副代表 半谷 輝己

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